投資顧問が関わった悪質詐欺の事件

悪質詐欺
日本で過去に起きた悪質な詐欺事件の中には、投資顧問業者が関わったものも多く含まれています。
日本では古くは投資顧問業法、現在では金融商品取引法の規定によって、財務局に登録した業者のみが金融庁の監督の下で投資顧問業を営むことができます。
この仕組みを利用し、正規の投資顧問業を営んでいると騙り、投資家や高齢者などから言葉巧みに出資を持ちかけてお金をだまし取るのが典型的な手口ですが、極稀に正規の投資顧問業者が詐欺行為におよぶケースもあり、その場合の被害は人数、金額ともに膨大になります。

実は、現在の金融商品取引法の前身である投資顧問業法が1986年につくられたのは、投資顧問が関わった大規模な詐欺事件がきっかけです。
その事件とは、1978年に設立された証券関連雑誌の編集および発行していた投資コンサルタント会社とその関連会社が絡んだ詐欺事件です。
この会社は1980年代前半に、自社発行の雑誌を通じて1人あたり10万円から数百万円の会費を募り、雑誌で紹介した銘柄を紹介するとともに自社の関連企業での融資を持ちかけたり、会費とは別に保証金を積むことで、関連会社から保証金の10倍にあたる金額の融資も可能であると言って出資を持ちかけたりしていました。
しかし、実際には出資者には預かり証を発行するだけで、株券の引き渡しや提示は頑なに拒否していました。

投資コンサルタント会社は上記の方法で7684人の顧客から約580億円の金銭を得ました。
事件が発覚したのは1984年で、翌年6月に海外から帰国した会社の会長とその妻、および当時の社長など、計11人が詐欺容疑で東京地検に逮捕されました。
当時、このような投資顧問業に対して法的に取り締まるための規定は存在しておらず、検察の聴取の中で自社に便宜を図る目的で政治家や官僚に株取引で得た利益を渡していたことがわかったことから、これをきっかけに規制に関する議論が出た結果つくられたのが投資顧問業法です。

AIJ事件とは一体どんな事件?

近年、投資顧問業者が起こした詐欺事件で最もよく知られているのはAIJ事件です。
これは、2012年1月に金融庁内にある証券取引等監視委員会がAIJ投資顧問に対して行った検査で、同社が運用していた1000億円以上の企業年金資産の大半が消失しているのがわかったことから発覚した事件です。

2011年当時、AIJは100を超える中小企業から1000億円を大きく超える額の年金積立金の運用を受託していました。
顧客に対しては、年金積立金の運用を開始して以来、最大で240パーセントの利回りを確保していると説明していましたが、実際には年金積立金の運用を始めてからことごとく運用に失敗しており、2008年頃には損失が500億円にまで膨らんでいました。

AIJに対しては、2012年2月に金融庁が業務停止命令を出し、3月に証券取引等監視委員会が強制捜査に着手しました。
国会では、社長ら関係者の証人喚問が行なわれました。
6月には刑事事件に発展し、AIJの社長ら4人が嘘の年金積立金の運用実績を示してファンドを販売し、2箇所の年金積立金からおよそ70億円を詐取した容疑で逮捕され、翌月起訴されました。

2013年12月に東京地方裁判所は、1000億円以上といわれている被害額のうち17の年金基金、計約248億円を被害として認定し、AIJ社長ら被告3名に対して懲役7年から15年、追徴金約157億円などの判決を言い渡しました。
被告らは控訴及び上告を行いましたがいずれも棄却され、2016年4月に刑が確定しました。

一方、1000億円超の年金資産を消失させたAIJ投資顧問は2013年5月のに社名変更後も存続はしていたものの、社長らの逮捕によって実質的に活動停止状態となりました。
そして、2015年12月に債権者からの申し立てによって裁判所が破産手続開始を決定しました。

AIJが1000億円超の預かり資産を消失させた影響は大きく、運用を委託していた厚生年金基金の多くで財務状況が悪化しました。
このため、政府は法改正による厚生年金基金制度の見直しを実施し、2014年4月からは新規設立を認めず、基金制度を廃止する方向で動き出しました。